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StarFabric、PCI Express、10Gigabit Ethernet、Serial RapidIO等、最近のインターコネクト技術では、シリアル・スイッチ・ファブリック技術が標準的に使用されています。その中で、テレコミュニケーションやミリタリー市場においては、高帯域で且つ品質・信頼性の面でも優れているSerial RapidIOが標準インターコネクトとしての地位を獲得し、広く採用が進んでいます。 ここでは、産業機器に代表される組み込みシステムに最適な高速インターコネクト技術としてSerial RapidIOをご紹介いたします。 Ⅰ.Serial RapidIO とは? Serial RapidIO はオープンスタンダード技術です! Ericsson社, Freescale社, TI社, Tundra社, Xilinx社等のボードベンダーやデバイスメーカ約40社が加盟するRapidIO Trade Associationで、規格の策定及び管理が行われており、Serial RapidIO規格はRapidIO Trade Associationのホームページで無償公開されています。
Serial RapidIO の特徴 A) 優れた柔軟性
B) 高帯域
C) 高信頼性
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Ⅱ.インターコネクト技術の比較 インターコネクト技術といっても世の中には様々な規格がありますが、それぞれ適している接続部位があります。図1で、各シリアルインターコネクト技術が対象としている接続部位を比較してみます。 PCI Expressは、主にCPUのプロセッサバスとグラフィックボードやI/Oデバイスを接続するためのI/Oバスとして使用されます。ケーブル拡張の規格もあり筐体間の接続も可能ですが、安定性の面に難があり産業機器への使用は一般的ではありません。Ethernet(1G / 10G)は、筐体間や遠隔地接続のような接続距離が長くなるような場合に使用されます。これに対して、Serial RapidIOはI/Oバスだけでなく、筐体内(バックプレーン)接続や筐体間の接続にも使用でき、また光I/Fを使用することで100m程度の接続も可能で、用途に幅があることが分かります。
図1 各インターコネクト技術の接続部位の比較
PCI Express、10Gig Ethernet、Serial RapidIOの特徴を表1に示します。 Serial RapidIOは、ツリー、スター、メッシュと多種のトポロジをサポートしているため、多種多様なシステム構成に対応する事が可能です。また、マルチプロセッサ接続やマルチキャスト、冗長性等が考慮されているため、高性能な分散処理システムの構築や、高信頼性のシステムを作る事が可能となります。
表1 各インターコネクト技術の特徴
図2は、各インターコネクト技術のパフォーマンスを比較したグラフです。(各規格のレビジョンはPCI ExpressはGen1、Serial RapidIOはRev1.3を使用) Serial RapidIOは他の規格に比べて転送効率が高いため、特に転送データサイズが小さい場合にその効果が大きく現れている事がわかります(10G Ethernetの約2倍)。データサイズが大きくなると10G Ethernetの転送レートが向上し、およそ1kByteを境にSerial RapidIOよりも高いレートとなりますが、レイテンシーが大きいため、リアルタイム応答性を要求されるようなシステムには向きません。その点、Serial RapidIOは、データサイズが大きい場合でも、低レイテンシーで且つ10G Ethernetと同等の転送レートを実現する事が可能です。
図2 パフォーマンス比較
ショートコラム【RapidIOの歴史】 1997年に米国Motorola社と米国Mercury Computer Systems社によって次世代インターコネクト規格の検討が始まり、1999年に最初のRapidIO規格が作成されました。その後、2000年にRapidIO Trade Associationが設立され、RTAにより規格が管理される事となります。2001年にRev1.1、2002年にRev1.2、2005年にはRev1.3がリリースされ、最近では2007年にRev2.0がリリースされています。 最初の規格では、LVDS信号を使用したパラレルバスの物理層のみが規定されていますが、2002年にリリースされたRev1.2でシリアルリンクの物理層が追加されたことで、シリアルリンクの物理層を使用するRapidIOの事をSerial RapidIO(sRIO)と呼ぶようになりました。Rev2.0では、シリアルリンクの帯域が6.25Gまで引き上げられ、PCI Express Gen2を凌ぐ高速インターコネクト技術となっています。 |
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Ⅲ.StarFabricからSerial RapidIOへの移行 StarFabricは、PCIバスをベースにした拡張インターコネクト技術として、多種多様な産業機器で非常に多く使用されています。米国の軍用機器にも使用されており、その安定性、信頼性も高く、Serial RapidIOと良く似た技術と言えるでしょう。
StarFabric技術の概要
図3 StarFabricシステム(例)
StarFabricとSerial RapidIOの機能の比較を表2に示します。 物理層やルーティング形式の仕様は異なりますが、通信方式や機能に関しては非常に似ているため、アプリケーションからみると、ほぼ同様の使用方法が可能です。そのため、既にStarFabricを使用しているシステムの、Serial RapidIOへの移行は比較的スムーズに進める事ができます。
表2 StarFabric と Serial RapidIO の比較
StarFabricからSerial RapidIOに移行する際に必要となる、ハードウェア及びソフトウェアの変更点を以下に示します。
ハードウェア構成
ソフトウェア構成
ハードウェアについては、ファブリックの構成要素であるエンドポイントとスイッチの置き換えが必要となりますが、トポロジに関してはStarFabricと同様の構成を取ることが出来ます。 ソフトウェアについては、初期化処理や通信設定の処理をSerial RapidIOに対応させる必要はありますが、Serial RapidIOのコンフィグレーションとメモリマッピングの作成まで出来てしまえば、その後の通信手順はStarFabricと同様に行う事が出来ます。
図3に示したStarFabricのシステム(例)を、Serial RapidIOのシステムに置き換えた場合の一例を、図4に示します。
図4 SRIOシステム(例)
エンドポイントとしてSerial RapidIOのI/Fを持っているPPCやDSPを使用する場合は、直接Serial RapidIOのスイッチに接続する事が出来ます。FPGAを使用する場合は、Serial RapidIOコアをFPGAに実装することで、プロセッサと同様に直接スイッチに接続する事が出来ます。また、Serial RapidIOのI/Fを持っていないプロセッサや、従来のPCIリソースを流用する場合には、Serial RapidIOとPCIバスをブリッジする、Tundra社のTsi620を利用する事で、Serial RapidIOに接続する事が出来ます。
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Ⅳ.Serial RapidIOシステムの開発 ここでは、Serial RapidIOシステムを開発する際に有用なツールや、ボード製品、システム製品についてご紹介したいと思います。
▼ Serial RapidIO Signal Analyzer for Tundra Switch
産業機器では、汎用のボード製品の組み合わせだけでシステムを構築せず、自社でハードウェアの開発を行うケースが多く見られます。その際に、ハードウェアの動作検証をどのように行うかで、頭を悩ませる技術者も多いのではないでしょうか。
【Link Partner Card】 【On-chip scope】
Serial RapidIOのハードウェア検証として最初に行う事は、シリアル通信部分のアイパターンの測定になります。通常は、高帯域のモニタリングが可能な高性能オシロスコープを使用して測定を行いますが、測定器自体が非常に高価である事や、測定方法を熟知している必要があり、決して容易ではありません。 Tundra社のSignal Analyzerは、測定対象のデバイスとLink Partner CardをJTAG接続するだけでアイパターンの測定を行う事が出来るツールで、Windows GUIであるOn-chip scopeの操作により誰でも簡単にアイパターンの測定が可能となります。
▼ RapidFET & Probe
分散処理システムのようなマルチプロセッシングシステムを構築する場合、Serial RapidIOファブリックの規模が大きく複雑になります。このようなシステムのデバッグを行う場合、各ノード間のトラフィックの状態や、ルーティング情報、エラー情報等をモニタすることが、デバッグの効率化への鍵となります。 RapidFETは、通常では可視化できないファブリック状態をWindows GUI上に表示するソフトウェアで、RapidIOトランザクションの状態監視やレジスタアクセス、ルーティング情報、エラー情報のモニタ等が可能となります。本ツールを使用する事で開発効率が向上でき、またシステムメンテナンス時のモニタリング等にも利用する事が可能です。
【RapidFET Client Software】 【Client PC】 【RapidFET Probe】 【PPC,DSP,etc】
▼ Advenced Mezzanine Card 及び MicroTCAシステム
Serial RapidIOは、既にいくつかの標準プラットフォームに採用されており、その一つに産業機器向けの標準化団体であるPICMGによって規格化された、Advanced Mezzanine Card(AMC)規格があります。AMCは、通信機器向けのプラットフォームであるAdvancedTCA用のメザニンボードの規格として作成されましたが、高い機能と性能を備えているため、AMCボードのみでシステムを構成するためのプラットフォームとして、MicroTCA規格も作成されました。 小型のシステムでありながら、高い機能・性能を持つシステムが実現出来る事から、AMC及びMicroTCAは産業機器には最適なプラットフォームであると言えます
AMCボード製品
◆ AMC-D4F1
◆ AMC-V5F
◆ AMC-3C87F
◆ AMC-3C87F3-GPS
MicroTCAシステム製品
◆ AMCスターターキット
◆ NAT-MCH(MicroTCA Carrier Hub)
ショートコラム【インターオペラビリティー】 Serial RapidIOに対応したASIC・FPGAや、それらを実装したボードが各社よりリリースされています。ここで重要となるのが各社製品間の相互接続性(インターオペラビリティー)です。 これについては、メーカーから独立したRapidIO Interoperability Lab (RIOLAB)で行われる、コンプライアンステスト及びインターオペラビィリティーテストにより、各社製品の相互接続性が検証・確認されています。 RIOLABで行われるインターオペラビリティーテストでは、RapidFETツールが使用されており、そのツールの品質の高さや有用性が証明されています。 また、MicroTCAシステムやAMCボードについては、世界規模のインターオペラビリティーワークショップが開催され、Serial RapidIOの動作確認のみでなく、システムとしてのインターオペラビリティーが、検証されております。 |